アフリカ北部の一角を占めるモロッコ王国には映画で有名な町・カサブランカも在り、ジブラルタル海峡を挟んでスペインと向かい合っている。フェズのメディナは9600もの細い路地からなり、まるで迷路のような複雑さ故に世界遺産に指定された。曲がりくねった路の両側には沢山の小さな店舗や製粉屋、鍛冶屋などがひしめき合っている。観光客や物売りでごったがえす中を重い荷物を背負ったロバ達が急き立てられ足早に通る。人間は両側の壁に張り付くようにしてやり過ごすのが作法だ。素晴らしい活気に溢れていて、わくわくする様な面白さなのだが、一種耐え難い、何世紀にも渡って染み付いた匂いが漂い頭がクラクラする。上の写真は、路地裏にある皮なめし(タネリー)と染色の作業場だが、大変な重労働だという。
迷路街の喫茶店・・・湯沸器が唯一の資産
Coffee in the Maze
この迷路の中に、インスタントではない、ちゃんとしたボイル式コーヒーを出す喫茶店を見つけた。外国人は絶対に入らないという感じの店で、約三畳の広さ。35才位のマスター(?)と助手の少年、お客は私を入れて三人も。言語の壁があり、全くコミュニケーションのできない5人は意味もなくニコニコとしていた。
その中でひとり堂々としているのは年代物の銅の湯沸器で、とても立派に見えた。コーヒーのつくり方はいとも簡単で、小さなアルミポットにコーヒー粉とお湯を入れ、少し火に掛け煮る。それを茶漉しでこして、変わった形のグラスで出してくれる。砂糖入りと抜きの両方を注文し、試して見た。
結果的にどちら良かったかと言えば、残念ながら砂糖入りだった。しかし今ここでコーヒーの品質とかにこだわって、あれこれ言うのは愚の骨頂かも知れない。皆んなに、向かいの店の親父さんからも物珍しそうにじろじろ見られながら飲む快感に浸るべきか。迷路の真っ只中、こんな所まで入り込んでコーヒーを飲む外国人は3年に1人かも。
スペインへ船でわたる